カウンセリングも終わり、
いよいよ植毛手術の日が来た。
「若はげ」が都会に降り立つ。
似合わねぇww
不公平なことに、「若はげ」が都会に行くと、
いるだけで、ものすごい災難に見舞われる。
例えば、オフィスビルのエレベーターである。
薄毛のクリニックは、往々にして
オフィスビルの上階に位置し、
おしゃれなエレベーターに乗る必要がある。
そして、都会だけあって、外人さんが多く、
外人さんと一緒にエレベーターに
乗ることになる。
仕事がバリバリできそうな外人さん達に、
1人 「若はげ」が混じっている。
明らかに場違い
変な生き物が1匹混ざっている事は
外人さんも気づいており、
好奇の目で見られたあと、
徐々に不審者扱いされる。
エレベーターが上昇し、しばらくすると、
ある外人さんが、急遽、叫び出す。
時として、ニンジャと間違えられる事がある。
外人さんも、連日、
このオフィスビルに通勤しているため、
15階に
そういうクリニックがある事くらいは
当たり前のように知っている。
エレベーターが15階で止まった瞬間、
外人さんは全てを理解し、
不審者扱いは終了する。
このオフィスビルでは、
15階でエレベーターが停まると、
失笑が飛び交うのが風習となっている。
もはや、さらし者であるが、
こいつらとは2度と会わないと考えれば、
この罰ゲームも乗り切れる。
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クリニックに到着してしまえば、
一気に気が楽になる。
なぜなら、このフロアには
自分と同じ属性のヤツしかいないからだ。
みんな、あの勇気のエレベーターの試練を
乗り越えてきた、いわば戦友である。
すれ違いざまに、
相手の生え際を鑑賞してしまうのは、
もはや職業病である。
若くして苦しんでいるのは
俺だけじゃないんだと、
奇妙な連帯感すら生まれる、
この空間の異常さよ。
このフロアは若はげばっかりだといっても、
やっぱり恥ずかしいから、
一目散に受付へ駆け込む。
恥ずかしい時にあるあるだが、
受付には、必ず
かわいい若い女の子がいる。
この瞬間男としての
プライドは崩壊する
挨拶の後は、直ちに手術費を請求される。
そして、1枚の紙を渡され、
署名を求められる。内容は、
「手術中・手術後に何が起ころうとも
私は文句を言いません」という、
「若はげ」に不利な内容である。
ただし、
署名を拒否すると手術ができないため、
半ば強制である。
いよいよ手術開始
手術の時の服に着替えたら、
早速、手術室へ案内される。
植毛手術というのは
どんな事をするのかと言うと、
皮膚の移植であり、完全に
外科手術(オペ)である。
後頭部の毛根を採取される前に、
まずは、その毛根の辺りを、
バリカンで刈り取られる。
その後、刈った部分の皮膚ごと
一網打尽に採取する予定だ。
プロローグとして、腕に
静脈注射(全身麻酔)を打たれるが、
全く痛くない。
この時、全ての「若はげ」達は
みんな同じ事を考える。
植毛なんて楽勝じゃん(笑)
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快適 快適
次に、ベッドにうつぶせになり、
毛根を採取する予定の後頭部に
麻酔を放たれる。
患者の「若はげ」は まだまだ余裕である。
植毛なんて痛くない 痛くない(笑)
ネットのクソ情報なんか鵜呑みにして
損したぜ~
よ~し 次
後頭部に麻酔
行きますよ~
参考までに、腕と違って、
頭に注射すると、
ものすごく痛い。
植毛体験者にヒアリングすると、
今まで感じた痛みの中で、
ダントツ1位だそうだ。
この強力な攻撃(麻酔)に、
あえて名前をつけるなら、
ライトニングプラズマ、
ギガスラッシュ、邪王炎殺黒龍波、
反動蹴速迅砲 などが適切と言える。
夜叉のような顔で痛みに耐え忍ぶが、
まさかの2発目
要するに、採取する皮膚の
長方形にそって、
麻酔ミサイルを撃ち込んでいくようだ。
つまり、ミサイルを
10発程度、撃ち込まれる。
こうなると、もう察しはつくが、
毛根移植先であるM字部分にも
数本発射
ノンストップ
20代で「若はげ」になると、
こんな思いをしなくてはならない。
何たる不公平
しかしながら、この麻酔20本が
植毛手術の最大の山場であり、
その後は、消化試合となる。
なぜなら、麻酔が効いてくるからだ。
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毛根採取
全身麻酔が効いてきているため、
何も感じない。
後頭部にメスを入れて
皮膚ごと引きちぎっているようだが、
何の感覚もないため、
痛みは一切ない。
この時点では、まだ意識は残っている。
無くなった後頭部の長方形部分は、
生理食塩水でブヨブヨにしてから
引き伸ばした状態で縫い合わせる。
植え付け開始
この頃から、全身麻酔が猛威を振るい、
意識が薄れていく。
もはや、痛みはおろか、
一切の感覚が無いため、むしろ
心地よくなってくる。
つまり、爆睡となる。
目覚めると終わっている
目が覚める頃には、ほとんど
植毛手術が終わっている。
手術後に鏡を見せてくれるが、
M字部分の皮膚は血まみれである。
消毒の後は、包帯をぐるぐる巻きにして
全工程終了である。
さすがに見た目がヤバいため、
安物のニット帽をくれるクリニックが多い。
翌日 経過観察
強制的に、手術翌日の
診査の予約を入れられるため、
家が遠い人は
クリニックの近くのホテル等で
1泊しなくてはならない。
そして、ホテルに到着するあたりで、
ついに
麻酔が切れ始める。
すっかり忘れているが、植毛の手術直後は、
大怪我をしているような状態である。
麻酔が切れると、めちゃくちゃ痛い。
現在、M字部分と後頭部が大ケガ状態であり、
特に、寝るときに後頭部が
とんでもない事になる。
ケガをしている所に圧力が加わると
言うまでもなく、激痛が走る。
この時の後頭部の痛みは
先の麻酔とは違い、鈍痛であり、
重苦しい痛みである。
この鈍痛に あえて名前をつけるなら、
闘魔傀儡掌(とうまくぐつしょう)、
積尸気冥界波(せきしきめいかいは)、
パープルヘイズなどが適切と言える。
なお、クリニックから
痛み止めを処方されており、
これを飲まないと決して眠れない。
翌日の検診では大した事はされず、
消毒と包帯の交換で終了する。
あとは、自宅で静養である。
さて、植えた髪の毛はどうなるのか。